診療放射線技師の役割
そして国際的なガイドラインから見てみましょう。
1.法律が定める「診療放射線技師」
診療放射線技師法(最終改正:平成二一年四月二二日法律第二◯号)第二条第二項で、
「診療放射線技師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、医師又は歯科医師の指示の下に、放射線を人体に対して照射(中略)することを業とする者をいう。
と定められています。
また、同第二十四条には、
医師、歯科医師又は診療放射線技師でなければ、第二条第二項に規定する業をしてはならない。
とあり、人体に放射線を照射することは、医師・歯科医師・診療放射線技師にのみ認められた業務であることを規定しています。
さらに、同法第二十四条の二には、
診療の補助として、磁気共鳴画像診断装置その他の画像による診断を行うための装置であつて政令で定めるものを用いた検査(医師又は歯科医師の指示の下に行うものに限る。)を行うことを業とすることができる。
とあり、法律に定義する放射線をあつかう業務以外にMRI検査・超音波検査・眼底写真撮影を業務として扱うことが認められています。
一方、同法第二十七条には、
診療放射線技師は、その業務を行うに当たっては、医師その他の医療関係者との緊密な連携を図り、適正な医療の確保に努めなければならない。
とされ、さらに第二十九条には、
診療放射線技師は、正当な理由がなく、その業務上知り得た人の秘密を漏らしてはならない。診療放射線技師でなくなった後においても、同様とする。
と規定され、チーム医療の一翼を担うものとして期待されているとともに医療従事者として重い責任も課せられています。
2.日本診療放射線技師会の「診療放射線技師倫理綱領指針」
診療放射線技師の唯一の職能団体である日本診療放射線技師会は、診療放射線技師の職業倫理を「綱領」として規定しています。
1. わたくしたちは、医療を求める人々に奉仕します。
1. わたくしたちは、チーム医療の一員として行動します。
1. わたくしたちは、専門分野の責任をまっとうします。
1. わたくしたちは、人々の利益のために、常に学習します。
1. わたくしたちは、インフォームド・コンセントを尊重し、実践します。
3.世界放射線技師会(ISRRT)が提示するガイドライン
1957年に設立された世界放射線技師会は、1993年9月に診療放射線技師の役割・責任を明確にするために「診療放射線技師の役割」についてのガイドラインを提示しました。
(MRT、Radiographer)ISRRT 1993年9月
●1.0 はじめに
本文書は、以下の目的のために、ISRRTが全加盟国技師会と協議して作成したものである。
1.診療放射線技師(MRT)の役割をはっきりと定め、明確にする。
2.医療チームの一員としての診療放射線技師が担っている責任を明確にする。
3.専門職教育プログラムの作成を促進する。
診療放射線技師(MRT)とは、MedicalRadiatlon Technologists、Medical RadiologicalTechnologlsts、Radiogfaphefs、RadiologicalTechnologists、lmaging TechnoIogists、Radiationthefapists、Sonogfaphefs、Nucleaf MedicineTechnologistsその他、各国が認定している専門教育プログラムを修了した人を指す。国によってそれぞれ異なった専門用語が用いられている。以下では、放射線技師の一般的な役割及び専門分野(放射線診断、放射線治療、核医学、超音波、デジタルイメージング、MRl)における役割の定義が詳細に述べられている。個々の放射線技師に求められる役割には、多くの要因がからんでいるのは明自である。たとえば、技術的にどの段階まで達しているか、各国の特徴や施設の規模はどういうものか、医療チームはどのような種類の仕事を行っているのか、他の医療スタッフの質はどうか、どの程度他の医療スタッフを使うことができるのか等である。従って、どの程度の実践が可能かどうかは国内でも国家問でも違いがあることを認識しなければならない
(MRT、Radiographer)ISRRT 1993年9月
●2.0 放射線技師の責任
放射線技師は、画像部門もしくは放射線治療部門における7つの重要分野を統合する専門家である。この7分野とは、ペイシェントケア、技術の利用、線量の最適化、臨床責任、組織化、品質保証、教育・訓練である。以上の各分野における放射線技師の役割について、以下に概略を述べる。
2.1ペイシェントケア
放射線技師は、患者のケアにおける患者の福利に関して、直接的な役割を果たすとともに、監督も行う。これが放射線技師の第一の責任である。
患者の福利は、以下のものに左右される。
a)放射線技師が患者に影響を及ぼす可能性のある肉体的・精神的な関連要因を認識し、患者の社会的・文化的二一ズを理解し、必要に応じて報告すること。
b)患者が全般的に安全で快適であるように、放射線技師が適切な手はずを整えること。
c)必要な情報がすべてそろっており、情報には間違いがなく、かつ正しい確認手順が取られていることを放射線技師が確認すること。
d)患者から必要な手順に対するインフォームド・コンセントを得ること。
e)相互感染を予防するために適切な施設及ぴ方法をすべて用いるという必要条件を、放射線技師が満たすこと。
f)すべての倫理的配慮が満たされていること。
2.2 技術の利用
放射線技師は、電離放射線または非電離放射線を用いた画像診断、あるいは電離放射線を用いた放射線治療に専門化する傾向にある。放射線技師は、診断用画像の作成または放射線治療の実施における唯一の専門家である。
2.3 線量の最適化
ICRP36には、放射線技師は患者の放射線防護に関して重要な立場にあり、その「技能と注意によって、広い裁量内で、照射する放射線量を決定する」と述べられている。従って、放射線技師は、以下を行わなくてはならない。
a)患者及ぴスタッフヘの電離放射線使用に関するあらゆる法律や法規、規則、勧告を理解し、適用することができる。
b)電離放射線を医用及ぴ研究用に使用した結果生ずる身体及ぴ遣伝的な危険性を理解し、質問に対しては適切な用語で説明できる。
c)放射線技師の態度や権威、最新の知識の保持によって、医用目的の放射線利用の管理を助ける。
d)放射線技師は、「放射線防護管理者」としての役割を果たす態勢が整っていなければならない。
2.4 臨床責任
放射線技師の主たる専門知識及ぴ責任は、画像診断や放射線冶療においてあらゆる種類の技術を駆使し、その後に自分の仕事の質を評価することである。放射線技師は、自らの行動に対する職業的責任を負い、自分の専門範囲について判断し、情報の機密性を保持しなければならない。
2.5 組繊化・管理
放射線技師は、組織内で自らが任命されている職位に応じて、自分の業務を適切にまた効率的に組織し、資源を利用し、自分の責任領域に対し部門の方針を適用しなくてはならない。
2.6 品質保証
放射線技師の責任領域すべてにおいて、品質保証の手続きが必要である。あらゆる具体的な場合において、放射線技師は、放射線部門の品質基準を設定し、維持し、監視するチームの正式なメンバーでなければならない。そのようなブログラムがない場合には、放射線技師がプログラムを提案し、確実にそれを実施する責任を有している。
2.7 教育・訓練
放射線技師は現場の専門職として、進歩や開発に応じて常に最新の技術を駆使できるようにしておくとともに、患者のためになることが実証されている研究成果については適用しなくてはならない。臨床の場で働く放射線技師は、放射線技師学生の臨床教育に携わらなければならない。放射線技師の資格や能力、役割により、適切な状況で他のスタッフに助言し、指示し、監督することができる。さらに、学生や他の専門職、一般の人々に対する理論面の訓練への参加を要請されることもある。ここまでは、実践している専門分野にかかわらず、すべての放射線技師が負っている責任を一般的に述べたものである。以下では、特定の分野における役割について、より具体的な助言を述べる。
(MRT、Radiographer)ISRRT 1993年9月
●3.0 放射線診断部門における放射線技師の役割
現代の診断部門では、画像作成モダリティーといえば通常、一般撮影、X線透視検査、デジタルイメージング、超音波、核医学、MRlを含む。
3.1 ペイシェントケア
放射線技師は、以下の点を確認した場合のみ、撮影の手続きを行う。
a)患者の確認が適切に行われている。
b)以前に実施した撮影によって必要な情報が既に得られているということはない。
c)X線検査の前に、関連する臨床歴が患者から得られており、適切な検査が要求されているか、あるいは、そうでない場合には適切な医療スタッフヘの照会が行われる。
d)同時に行われる処置や検査によって良好な撮影結果が妨げられることはない。
e)準備指示または前投薬、また造影剤の指示が正しく行われている。f)適切なアフターケアが実施されている。
g)胎児を保護するための勧告手順を適用している。
h)相互感染を防止するために、あらゆる予防措置が取られている。
i)あらゆる倫理指針に従っている。
3.2 患者のポジショニング
最終的に得られる画像が最適なものになるように、患者のポジショニングとフィルムの設定を行い、X線の入射方向を決めることは、放射線技師の責任である。そのためには、下記の点を考慮しなければならない。
a)患者の快適さ
b)固定
c)放射線部門のプロトコル(規約)及ぴ必要な修正
d)現場にいる者全員に対する放射線防護
3.3 撮影条件
患者の状態を考慮に入れて、適切なX線写真の濃度と詳細な画像(シャープさ)が得られるよう、撮影条件及び感光材料を適切に組み合わせることは、放射線技師の責任である。その際、以下の点を考慮しなければならない。
a)X線の透過力
b)自動露出装置やmA一時問一距離の組み合わせを正しく用いること
c)選択した焦点サイズ及ぴ管球走格
d)一次、二次放射線を制限するために適切な器具は可能な限り使用すること
e)選択した画像記録システム及び必要な画像処理
3.4 放射線照射及び線1の最適化
放射線技師は、電離放射線から生じる身体的・遣伝的危険に関し、大きな責任を負っている。以下の点を考慮しなくてはならない。
a)装置がその目的に適していること。
b)一次ビームが適切に濾過されていること。
c)各照射の問、放射線を制御する適切な付属品を選択し、使用していること。
d)生殖腺に対する適切な防護具を便用していること。
e)胎児を防護するための勧告手順を適用していること。
f)電離放射線の便用に関する「事故」に対し、放射線技師が適切に対応すること。
g)すべての規制や規則に従っていること。
h)放射線技師が、最新の必要情報を常に知っていること。
3.5 画像の記録
フイルム画像または動画像を作成し、保管を維持管理することは、放射線技師の責任である。放射線技師は、画像が提出すべき報告用に十分な水準のものであるかどうかを判断できなくてはならない。放射線技師は、以下の点に対し、責任を負っている。
a)処理装置や化学薬品がきちんと整っており、安全に便用できる状態であること。
b)その目的にとって、画像の質が最適であること。
c)確認は正しく、完全であり、不変的なものであること(これは医療における法律上の要件である)
d)医療スタッフの適切なメンバーに画像を提示する前に、照射録が完成していること。
放射線技師は、その責任の中に臨床医に画像所見について説明することや、異常所見が認められる場合にはそれを報告する義務を含めなければならないことがある。
3.6 装置
放射線技師は、以下が達成できるようなやり方で装置を便用し、管理しなければならない。
a)患者、スタッフ、その他すべての人々に対する危険を可能な限り最小にする。
b)患者、スタッフ、その他すべての人々に対し、不必要に照射しない。
c)撮影上の失敗が装置の操作ミスによるものでない。
d)装置を安全に、また正しく便用する。e)装置の性能を常時監視する。
以上の機能を遂行するため、放射線技師は以下のことができなくてはならない。
a)その装置がきちんと作動する状態にあることをチェックする。
b)装置の性能を監視するために必要なチェックや試験はすべて実施する。
放射線技師は、以下の点に責任を有している。
a)放射線部門は、性能試験を実施するために必要な試験装置がすべそそろっていて、それらの試験装置は良好な作動状態にあることを確認する。
b)装置またはその性能の欠陥はすべて報告し、適切な人から必要な修理が要請されていることを確認する。
c)装置及ぴその周囲に、身体上の危険がないことを確認する。
d)放射線部門の規約を考慮に入れ、与えられた装置及び付属品の範囲の中から、最良の放射線画像の作成に役立つものを選択する。
3.7 デジタルイメージングにおける責任
放射線技師は、以下の点に責任を負っている。
a)必要な三次元情報が得られるよう患者のポジショニングを行うために、横断面解剖に関する詳細な知識を有する。
b)プログラムを選択する。
c)補償フィルターの使用、照射係数あるいはパルス系列の選択、付属装置の使用等、選択したパラメータを用いた場合、予測される画質について助言する。
d)最適画質を得るために、データを記録し、適合させ、画像を再構成する。
e)情報を保管し、検索する。
f)得られた画像が読影・診断用に適しているかどうか、評価する。
3.8 他職種との連接が必要な検査
以下のような検査で放射線医や研修を受けた臨床医と協力することは、放射線技師の責任である。
a)蛍光板透視及ぴI.I.透視
b)血管造影と治療を加味したインターベンショナルラジオロジー
c)手術室や集中治療室など、放射線部以外で実施される放射線検査
d)その他の画像作成
このような状況における放射線技師の責任には、以下の点に加えて、検査の調整が含まれることがある
a)装置の準備と使用
b)ペイシェントケアとポジショニング
c)撮影条件の選択
d)線量の最適化
e)手順及び画像記録の文書化
(MRT、Radiographer)ISRRT 1993年9月
●4.0 超音波検査部門での放射線技師の役割
4.1 はじめに
超音波は、非電離放射線を利用する専門分野である。他の画像様式に比べてオペレータに依存する部分が多いので、装置を操作する人の非常に高度な理解と判断が要求される。超音渡を扱う技師は、前章までに項目として挙げた役割に加え、関連する解剖学や生理学、病理学、及び装置便用に関する物理学を完全に理解していなくてはならない。
4.2 患者のポジショニング
標準スキャンまたはそれを応用した方法によって、検査部位を画像表示しなくてはならない。リアルタイム画像から得られた情報によっては、即座に応用スキャンを行えることは、必須の技能である。
4.3 装置の設定
目的に適した画像を得るために、最適条件を選択することは放射線技師の責任である。これには、以下の点が含まれる。
a)探触子の選択
b)ゲイン設定及ぴその他の関連要因
c)記録システムの選択
4.4 画像の記録
フイルム画像または動画像の作成・保管を管理するのは、放射線技師の責任である。画像が、放射線技師または他の適切な専門職の人が行う報告用に十分な水準のものであるかどうかについて判断できなくてはならない。
4.5 越音波の最適化
超昔波の強さは、患者の安全性を考慮しつつ、最低限に保たれなければならない。
4.6 臨床責任
放射線技師は、以下のことができなくてはならない。
a)アーチファクト、偽エコー、真の所見を区別する。
b)解剖、病理学的構造を認識する。
c)電子装置類の限界を認識する。関連した教育や訓練が行われ、権限が与えられている場合には、放射線技師は必要に応じて、所見の説明や、口頭または文書による報告を行うことがある。
(MRT、Radiographer)ISRRT 1993年9月
●5.0 MRl/スペクトロスコピー(MRl及びMRS)における放射線技師の役割
5.1 ペイシエントケア
放射線技師は、以下を行わなくてはならない。
a)不安を軽滅し、閉所恐怖症による拒絶をできるだけなくすために、慎重に患者に心の準備をさせる
b)事故や画像上のアーチファクト発現を防ぐため、患者が磁場に反応する金属品等を身につけていないか、検査前にチェックする。
5.2 装置
放射線技師は、基本的な物理原理を理解し、装置の操作能力により、以下を選択することができなければならない。
a)パルス系列
b)組織変数、T1、T2、プロトン密度、フロー
c)信号収集
d)付属機器の使用
5.3 安全性
放射線技師は、強磁場にはさまざまな共用装置に影響を及ぼす大きな危険性があることを理解していなければならない。その区域内に入る人や装置を常にチェックし、適切な手段を講じなければならない。
(MRT、Radiographer)ISRRT 1993年9月
●6.0 核医学部門における放射線技師の役割
6.1 ペイシエントケア
放射線技師は、以下の点を確認した後に初めて、画像撮影または治療手順を行う。
a)患者の確認が適切に行われている。
b)検査(治療)環境が患者の治療に適した状態にある。
c)患者が、検査結果に障害となるような薬剤を服用していない。
d)患者は、検査結果に障害となるような検査や治療を以前に受けていない。
e)前処置用薬剤は正しく服用または投与されている。
f)必要な前処置が完了している。
g)妊娠の可能性のある患者には妊娠チェックを行い、もし妊娠中の場合は、適切な指導を行う。
h)投与された放射性薬剤の性質上、患者が日常生清で守らなければならない注意事項についてカウンセリングが行われている(これは特に授乳中の母親に関連する)。
6.2 放射性医薬品
放射線技師は、単一放射性医薬品及ぴ複合放射性医薬品を調剤できなくてはならない。これには、以下のものが含まれる。
a)Rlジェネレータをセッティングする。
b)ジェネレータより抽出し、放射能を測定する。
c)正確な容量と放射能量を算出する。
d)臨床使用に適した形で、放射性核種に無菌的に標識する。
放射線技師は、診断または治療線量を投与された患者の検体を“1nvhfo”で測定できなくてはならない。これには、以下が含まれる。
a)装置を正確に便用する。標準値に対するデイリーチェックを行う。
b)バックグラウンド放射能を計測し、記録する。
c)記録データを用いて、必要な計算を行う。
d)データの確認が、正しく完全で、不変であることを確かめる。
6.3 放射性医薬品の投与
放射線技師は、以下を行う。
a)患者に対し、放射性薬剤を静脈内投与または経口投与する介助を行う、もしくは投与を行う。
b)投与量が正確であることを確認する(放射性医薬品及び放射能)。
c)投与時問を含む正確な投与量を記録する。6.4装置
放射線技師は、以下に関して責任を員っている。
a)与えられた装置及ぴ付属品の範囲の中から、必要な検査に最も適切なものを選択する。
b)装置の稼働状態が良好であることをチェックする。
c)装置に故障が発生した場合には、放射線技師は責任を持って、その故障内容を報告し、必要な修理を依頼し、適切な文書を整え、その他適切な手段を構じる。
6.5 患者のボジショニング
放射線技師の負っている主要な責任は、以下のものである。
a)最適な画像を作成するため、あらゆる面で患者が正しい体位をとるようにする。
b)解剖学的位置が明らかになるように、画像にマークをつける。しかし、そのマークが、不正確な診断につながるような画像の改曳や不明瞭化を生じさせてはならない。
6.6 操作パラメータ
以下の最適条件を選択することは、放射線技師の責任である。
a)使用している放射性核種に適した正確なエネルギーウィンドウの選択
b)適切なコリメータの選択
c)記録システムの選択
6.7 画像の記録
放射線技師は、以下の責任を負っている。
a)適切なブログラムを用いて、必要なデータ解析がすべて完了していることを確認する。
b)関連画像データは、適切に記録・保管され、検索できる。
6.8 放射線防護及び線量の最適化
放射線技師は、電離放射線による危険に関して重要な責任を負っている。非密封線源を使用することにより、さらに特定の危険が生ずる。放射線技師は、以下を行う。
a)放射性物質の受領、保管、使用、廃棄の詳細な記録を付ける。
b)放射性物質の保管及ぴ遮蔽が、関連法規に従っていることを確認する。
c)人、装置、環境への放射能汚染を防止する。
d)放射能汚染が起こった後には、部門で定められた規則に従い、適切な行動を取る。
e)放射能汚染が起こった後には、正しい手順で報告を行う。
f)患者及びスタッフヘの放射線の危険は最低限に抑えて治療線量照射が行われていることをチェックする。
g)診断または治療のために放射性医薬品を大量に投与された患者に接触するスタッフ及ぴその他の人々を防護するために、十分な指示を与える。
h)関連法規に従い、患者から出る放射性廃棄物の処理を組織的に行う。
i)「放射線防護管理者」の役目を果たす態勢を整えている。
6.9 品質保証
品質保証は、核医学部門では重要な役割を呆たしている。装置は非常に感度が高いので、パラメータの範囲内で作動していることを確認するために定期的なチェックが必要である。計器の正確な較正が最も重要である。多くの検査は、計数及ぴ統計学的変動に関連している。以上の点から、放射線技師が行うべき品質保証のための実行手順のリストが得られる。品質保証プログラムを実施するためには、放射線技師は、以下の点を遂行することができるよう、すべての試験及ぴ試験装置を理解し、経験することが必要である
a)必要なときには、試験装置はすべて利用可能であり、良好な作動状態であることを確認する。
b)試験装置を適切に使用する。
c)環境(患者及ぴスタッフ区域を含む)を定期的に監視する。
d)故障が発生した場合、それを認知し、不正確なデータの使用を防ぐ。
e)検査開始前に、決められた基準に沿って画像装置が作動していることを確認する。
(MRT、Radiographer)ISRRT 1993年9月
●7.0 放射線治療部門における放射線技師の役割
放射線技師は、放射線治療医の処方に従い、治療(照射)を準備し、チェックをし、実施する。放射線技師の責任には、照射部位の位置決め、照射記録、治療領域のマーキング、及びモールド作成も含まれる。さらに放射線技師は、患者やその家族に対する指導及ぴカウンセリングにおいても重要な役割を果たす。本章では、遠隔照射法及ぴ密封小線源について述べる。ただし必要な場合には、別途段落を設ける。
7.1 ペイシエントケア
放射線技師は、以下の点を確認した後にのみ、患者の治療を開始する。
a)患者の確認が適切に行われている。
b)患者、患者の配偶者や家族に対するカウンセリングが行われている。
c)患者が必要な事前治療(歯科など)、及ぴアドバイス(食事に関してなど)を受けたことを確認する。
放射線技師は、以下の責任を負っている。
a)治療(照射)時を通じて、患者が肉体的にも精神的にも快適であること。
b)常に、患者及び家族と効果的なコミュニケーションを取る。
c)治療中、患者を継続的に観察する。
d)他の専門職と協力して、患者に治療及びその副作用について助言をする。
e)治療に対する患者の反応を監視し、大きな変化を認知し、適切な手段を講じる。これは、主治医と協力して行うこともある。
7.2 治療計画
放射線技師は、以下の点に責任があり、遂行できなければならない。
a)放射線治療医の処方及ぴ計画指示を理解し、チェックする。
b)透視法やCTスキャンニング、場合によってはMRlを用いて位置決めを行い、またシミュレータを用いて治療領域や線源配置のチェックを行う。
c)照射を行う。これは他の専門職と協力して行うこともある。
d)目的に合わせて製作する固定器具や防護装置(モールド、補償フィルター等)の設計及ぴ製作を行う。
7.3 装置
放射線技師は、以下の目的のために、密封放射線源やアフターローディング装置を含む装置を便用し、整備することができなければならない。
a)患者、スタッフ、その他すべての人々に対する危険性がない。
b)患者、スタッフ、その他すべての人々に対し、不要な照射を行わない。
c)装置に故障や損傷がある場合には、直ちに報告し記録する。
d)装置を安全にまた正しく使用し、その性能を常に監視している。
以上の機能を遂行するために、放射線技師は以下ができなくてはならない。
a)適切な較正及ぴチェックが行われていることを確認する。
b)試験装置がいつでも利用可能であり、良好な作動状態であることを確認する。
c)放射線部門の規約に沿って装置の性能をチェックし、その結果を記録する。結果が放射線部門の必要用件を満たしていない場合には適切な人に報告する。
d)装置の性能に関する正確で包括的な記録を保持する(修理や修正も含む)。
e)危険がないように、装置及ぴその環境が清潔にきちんと保たれている。
f)治療中、装置の性能を継続的に監視する。
g)線源を準備し、アフターローディング装置のプログラミングを行う。
h)手術室という特殊状況で放射線源を便用する場合には、その準備と整備を行う。この場合、手術滅菌手順が含まれることがある。
7.4 患者のボジショニング
放射線技師は、以下に関して、シミュレーションや治療計画部門が処方した開始手順を理解し、チェックし、実施しなくてはならない。
a)患者のポジション
b)放射線ビームの方向
c)必要な装置の選択及ぴ使用
d)照射された1日当たりの総線量及び分割照射
e)放射線のエネルギー及び種類
f)治療照射パラメータ及び付属装置使用の必要性
g)患者の適切な固定
7.5 治療照射記録
放射線技師は以下の点に考慮しつつ、規約に従って治療(照射)を記録しなければならない。
a)治療照射録の確認
b)治療照射録への記載
c)シミュレーション画像の有無
d)線量分布の有無
7.6 放射線防護及び線量最適化
放射線技師は、電離放射線による身体的・遣伝的危険性に関し、重大な責任を負っている。下記の点を考慮しなければならない。
a)処方された治療照射技術の正確な適用
b)放射線部門の規約の適用
c)放射線防護及ぴその適用に関する最新の法規の理解
d)放射線使用に関して、不慮の被曝が起こった場合の適切な反応
7.7 他職種との運接が必要な治療
放射線治療医、研修を受けた臨床医、画像診断部門と協力することは、放射線技師の責任である。例えば、CTやMRl、その他の方法を用いて、患者の体内へのアプリケータの挿入(腔内、組織内、管腔内)、位置決めやシミュレーション等である。
(MRT、Radiographer)ISRRT 1993年9月
●8.0 組織における診療放射線技師の役割(管理)
組織における放射線技師の責任の範囲や分野は、その放射線技師が任命されている職位によってさまざまである。職位が上がるにつれて、放射線技師の役割における組織的要素が増大すると考えられる。以下の要素を考慮しなくてはならない。
a)放射線技師は、患者に対して、あらゆるレベルで可能な限り高いサービス水準を設け、その水準を維持し、さらに向上しなければならない。
b)部門または分野の目的と目標を設走する。
c)部門のスタッフとコミュニケーションをはかり、スタッフをまとめ、動機付けする。
d)必要な場合には、スタッフの選任や任命に参画する。
e)必要な場合には、質の高い24時間サービスが維持されるようにする。
f)効率的なサービスを提供するために、必要な統計学情報が保存され、利用可能であるようにしておく。
g)放射線技師に関するあらゆる法律に準拠し、職場での適用が最新ものであるようにする。
h)放射線技師の専門技術の課題について、管理者、その他の人々にアドバイスし、共通の関心事項について協力する。
i)装置、規約、資源利用等、部門が開発を行う場合は常に、計画チームのメンバーになる。
j)在庫や供給を、部門の予算内での最適レベルに保ち、便用目的に合致させる。
k)病院内外の専門職の人々と、共通の関心事項についてコミユニケーションを取り、協力する