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放射線被ばくQ&A

放射線被ばくによる健康影響について(しきい値)

Q:少しでも被ばくでも健康障害が現れるのですか?

A:放射線被ばくによる健康影響には二種類あります。一つは脱毛や血液に変化や胎児の奇形などです。これらの影響は大量被ばくによって、細胞の修復能力を上まわる損傷によって発生します。このような障害は大量被ばくしなければ現れません。例えば、100℃の水では火傷しますが、20℃の水で火傷することはありません。火傷するかしないかの境を仮に45℃とすれば、これを「しきい値」と呼んでいます。妊娠初期の胎児の奇形のしきい値は100mGy(ミリグレイ:GyとSvの違いは単位解説をご覧ください))と言われています。20℃の水で火傷しないように、妊娠初期に胎児の被ばくが100mGyを越えなければ、被ばくによる胎児の心配はありません。今回の福島原発事故で、住民の方がこのような大量被ばくは受けていないと考えられます。

放射線被ばくによる健康影響について(確率的影響)

Q:被ばくが少しでも悪いとはどういうことですか?

A:大量に被ばくすると、被ばく線量が増えるにつれて発がん率が増えることが分かっています。大量被ばくした集団のだれが発がんするか分かりませんが、被ばく線量が増えるにつれ発がん率も増えていきます。逆に、被ばく線量が減るとがんになる人も減っていきます。このように被ばくに量に応じて確率は変化しますが、どんなに被ばくが少なくとも確率がゼロになることはありません。このことが、世間には被ばくは少しでも悪いという言葉で広まっています。少しでも悪いと考えているのは確率的影響である発がんと遺伝的影響です。そして遺伝的影響は人類では確認されていないので、低線量被ばくでは発がん対策が注目されています。

100mSv(ミリシーベルト)の意味について

Q:100ミリシーベルト以下ではがんが確認されていないとはどういうことですか?

A:発がん因子は被ばくだけではありません。そのため、ある程度被ばく線量が減ってくると日常生活の中にある発がん因子の影響が大きくなり、被ばくによってがんが増えるかどうか分からなくなります。被ばくによる発がん率の増加が確認できた下限の値が年間100ミリシーベルトです。そして、年間数ミリシーベルト以下は、影響が小さすぎて調べても分からないレベルと言われています。

すぐにはがんになりません。

Q:事故から半年後に白血病になった方がいます。原発事故の被ばくが原因でしょうか。

A:正常細胞ががん細胞に変異して姿を現わすには潜伏期があります。白血病の潜伏期は2年から3年以上と言われているので、質問された方の白血病は原発事故以外に原因があると考えられます。

子どもへの影響

Q:子どもの感受性が高いので、発がんし易い体になった事を心配しています。

A:大量に被ばくすると発がん率が高くなります。広島・長崎で被爆した方たちを調べると、その中で子どもの感受性が高いことが分かりました。しかし、被ばく線量が少なくなると発がん率も減少し、100ミリシーベルト以下では、だれでも持っている被ばく以外の発がん因子の影響の方が大きくなり、被ばくによってがんが増えるかどうか分からなくなります。
子どもの感受性は低線量被ばくでも高いと考えられていますが、それ以上に日常の発がん因子の影響が大きいため、低線量被ばくにおける子どもの発がん率増加は十分には分かっていません。

基準値について

Q:事故後、一般住民の放射線被ばくの限度に関する基準値が年間1ミリシーベルトから20ミリシーベルトに引き上げられましたが大丈夫なのでしょうか?

A:平常時は年間1ミリシーベルト程度であれば日常のリスクの一つとして社会的に許容されると考えて管理基準が設定されていましたが、事故後は健康被害防止の視点から、国際的な機関が示している年間20~100ミリシーベルト中の20ミリシーベルトを採用して管理が行われています。平常時と緊急時では管理基準が異なるため社会を混乱させていますが、年間20ミリシーベルトの被ばくによる有意な健康影響の増加は確認されていません。

避難について

Q:赤ちゃんと母親だけでも被ばくの影響のないところに移住した方がいいかと思っていますが、宮城県内から避難する必要はあるのでしょうか?

A:宮城県内は避難区域にも避難準備区域にも入っていませんが、赤ちゃんと母親が安心するために移住するにしても、家族が離れてしまうことの負担や、生活の基盤等をよく考えて判断することがよいのではないでしょうか。

収束について

Q:大丈夫と言いながら、なぜ除染をするのですか?

A:数ミリシーベルトの被ばくによる健康への影響は確認されていません。健康影響の視点で考えると心配ないという表現がされることもあると考えます。しかし、放射線被ばくはリスクを伴います。リスクを伴うものを無造作に扱うことはできません。余裕をもった安全基準を設定して管理が行われます。除染はリスク管理の一環として実施されており、健康影響の現れる境を基準としたものではありません。このように健康影響と放射線管理は異なる視点なのですが、区別が難しく混乱を招いているようです。

Q:この問題はどのくらいで落ち着くのでしょうか?

A:原発事故によって日本は広範囲に汚染され、国民は必要のないリスクや負担を背負うことになりました。このような中で社会が落ち着きを取り戻すには、放射能の汚染状況が大きく影響します。宮城県内の線量は健康影響の確認されない程度と言われていますが、この現状をどのように判断するか、今は大変混乱しています。現状を客観的に判断して行動できるようになると社会は落ち着きを取り戻すものと考えられます。その為には情報が必要ですが、うわさも含め様々な情報が氾濫しています。宮城県の広報等、公的・社会的に認知された情報を参考とすることが大切です。

母乳について

Q:母乳によって被ばくが子どもに蓄積されるのでしょうか?

A:母親が食べた食品中のヨウ素やセシウム等すべての放射性物質が母乳となってお子さんの口に入るのもではありません。また、外部から取り込まれた放射性物質は時間と共に体の外に排泄されます。

水道水について

Q:ミルクの水は買って与えていますが、水道水をあげても大丈夫でしょうか?

A:現在の水道水の放射能は検出されない状況が続いているので問題ないと考えられます。詳しくは日本産科婦人科学会のホームページをご覧ください。

野菜について

Q:食品の摂取基準が厳しくなりました。これまでの基準では不十分だったのでしょうか。

A:放射性物資は自然界に広く存在するため、普段から放射性物質が食品に含まれています。そのため、原子力災害時にあまり厳しい基準を設けると、リスクより食生活への影響の方が大きくなると言われています。そこで、全身の実効線量として5ミリシーベルトを管理の下限とし、50ミリシーベルトを超える場合いは必ず管理すると国際的な基準が示されていました。そして、各国の事情に応じて5から50ミリシーベルトの間で基準を設けるとされていました。日本の暫定基準は、管理基準の下限である5ミリシーベルトを基準として設定されていました。
平成24年4月からの新たな基準は、国民に安心して頂くことを目的として基準を厳しくしました。安心して頂くための視点に立った基準変更なのですが、国民にその趣旨が上手く伝わらず混乱を招いているようです。

雨について

Q:雨にあたっても大丈夫でしょうか?

A:爆発当時は大気中に含まれていた放射性物質が雨に含まれていたと考えられますが、それ以降新たな放出はありません。現在はセシウムが地面に落ちている状態なので健康影響を及ぼすような放射性物質が雨に混じって降るということはありません。

散歩、洗濯物、窓の開放について

Q:放射性物質を吸っても大丈夫でしょうか?

A:現在は土壌に付着したセシウムが舞い上がって被ばくすることが心配されます。
日本保健物理学会のHPで紹介している計算方法を参考にすると、1時間当たり0.5マイクロシーベルトの線量から土壌の汚染を推定し、その汚染された土埃を24時間吸引した場合の大人の内部被ばくは年間0.06ミリシーベルトと推定されます。子供の場合は呼吸量が少ないので更に低い値となります。24時間土埃を吸っていることはありませんし、人類は世界平均で年間2.4ミリシーベルトの自然放射線被ばくの中で生活しています。土埃による被ばくが大丈夫かどうかは、皆さまが判断されることですが、情報をさまざまな視点で判断することも大切ではないでしょうか。

外遊びについて

Q:子どもは外遊びが好きで、水たまりや砂、土、草むら等を好んで遊びます。長時間遊ばせないようにしたり、うがいや手洗いはしていますが、そういうところでは遊ばせない方がいいのでしょうか?

A:原発事故により周辺の放射線量は高くなりましたが、世界の中では自然放射線による被ばくが1時間あたり1マイクロシーベルトを超える地域があり、先祖代々そこで暮らしていても健康への影響が増える事は確認されていません。
宮城県内の放射線量は1時間あたり約1マイクロシーベルト以下ですから、健康への影響は確認されない程度ですが、余計なリスクを避けることは必要なことです。雨水が集積されるような、放射能が高まる場所を避けることは大切です。また、外遊びの際に帽子をかぶったり、遊んだ後にうがい、手洗いをすることは、衛生面からも良い習慣は続けましょう。

防護について

Q:福島の方では、子どもたちが長袖やマスクで過ごしていると聞きますが、そうした方がいいのでしょうか?

A:新たな放射能の放出がない限り、宮城県内の土埃からの被ばく線量は健康影響が確認される量に比べてとても小さいものです。ですから、長袖・マスクをしなければ健康影響が発生する状況とはいえません。しかし、安心は数値だけで決められるものではありません。日常生活に支障をきたす防護は検討が必要ですが、安心のための行動は各自の判断も大切です。

子どもの咳について

Q:最近子どもが咳込むようになったと感じますが、放射能の影響ではありませんか?

A:少しの被ばくで心配されるのは発がんと遺伝的影響(遺伝的影響は動物実験では確認されましたが人類では確認されていません)だけです。また、それ以外の影響は、細胞が破壊され体の修復機能を上回るほどの高線量の被ばくを受けて初めて現れてきます。宮城県内はそのような高線量被ばく地域ではありません。咳込みは被ばく以外が原因と考えるのが妥当でしょう。

奇形児について

Q:子どもが将来出産したときに、放射能の影響で奇形児が生まれるのではないかと心配ですが大丈夫でしょうか?

A:ご質問は将来の出産を心配されているので遺伝的影響を心配されているものと思います。広島・長崎では原爆で多くの方が犠牲になりました。その中を生き延び、結婚されて生まれた方々の健康調査が行われました。その結果、有意な遺伝的影響の増加は確認されませんでした。このことを広く知って頂き、原発事故の被災者が不当な差別を受けないことを願っています。

がんについて

Q:子どもたちが20歳、30歳になる頃に、がんなどの病気にならないか心配ですが大丈夫でしょうか?

A:100ミリシーベルト以上の被ばくによって発がんの可能性が高くなることが知られています。しかし、それ以下の被ばく量では日常生活の中にある他の発がん因子の影響の方が高くなり、被ばくによって発がん率が高くなるかどうか分からなくなります。国立がんセンターで日常の発がん因子(喫煙・高塩分摂取等)と放射線被ばくによる影響を比較した資料が紹介されています。将来の発がんについて考える場合、100ミリシーベルト以下では日常生活の中にある他の発がん因子の影響の方が大きいと言われているので、総合的に評価することが大切です。